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福島地方裁判所白河支部 昭和31年(ワ)56号 判決

原告

被告

河野近吾

主文

被告は原告に対し一四二、六九六円及び之に対する昭和二九年九月二八日から支払済に至る迄年五分の割合による金員を支払わねばならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

(省略)

理由

原告が被告に対し昭和二九年九月一八日福島県西白河郡西郷村大字羽太字羽太地内所在国有林内の杉立木一、二九九本二三一石を代金一六二、五〇〇円で売却し右払下木には他の生立木と区別するため根本及び胸高の個所を削り「官山」の刻印を押捺して之を翌一九日被告に引渡したこと、被告は同年九月二〇日から同月二七日迄間に右買受生立木を伐採する際同区域内で買受外の国有杉生立木等を不法に伐採したことは当事者間に争がない、よつて被告の不法伐採の生立木の数量価格等について検討するに成立に争のない甲第一、二号証、同第三号証の一乃至三、同第四号証の一、二、同第八号証同第九号証及び証人小玉茂の証言によつて不法伐採の生立木は杉生立木二〇六本その石数一七九石七七であることが認められるしかして右不法伐採した木材中原告が伐採現場で未搬出のもの伐倒木九〇本六八石七六、及び丸太二五本八石一七石数合計七六石九三を取押えたことは原告の自ら主張するところであるから残余の一〇二石八四は被告の不法伐採によつて原告の被つた石数であることは計数上明である尚前記証拠によつて右木材一〇二石八四の価格が一四二、六九六円であることが認められるのであつて右事実を覆えすに足る証拠はないよつて被告は原告に対し不法伐採による損害賠償として右金員及び之に対する不法伐採終了の翌日である昭和二九年九月二八日から支払済に至る迄民法所定の年五歩の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

被告は原告が被告の不法伐採によるものとして取押えて他に払下げたのは、杉伐木約四〇〇本、石数にして約一八〇石であり内約一五〇石は被告が原告から払下を受けた被告のものであると主張するが右事実を立証する証拠はない又前記認定の原告の被つた損害額(換言すれば不法伐採木一〇二石八四の価格)については被告は之を争ているが被告の全立証を以つてしても之を認めることはできないその他以上の事実認定を覆えすに足る証拠はない(右認定に反する被告本人訊問の結果は前記諸証拠に照し措信できない)。

よつて原告の請求は正当であるから之を認容し、訴訟費用は民事訴訟法第八九条によつて被告の負担とし主文のとおり判決する。

(裁判官 山崎益男)

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